未踏の領域

音楽家として生きるのは苦難の連続ですが、時としてその一切を越える喜びを与えられることがあります。この度の姫路公演「Blue God Rhapsody」が、まさにそうでした。

結論から言うと私自身の演奏はひどいものでした。言い訳はしませんが、不運というのは重なるものです。しかも、ここぞという時に限って。

せっかく文化堂が最高の環境を設えてくださり、青柳晋先生を姫路にお迎えしながら、私自身がご期待に応えきれなかったことは、返す返すも悔しく、今も胸が張り裂けんばかりの気持ちが続いています。

その一方で、姫路滞在中に散りばめられた美しい瞬間に思いを馳せると、この上なく幸せだったと確信します。

青柳先生には本番とは別に、二日間もリハーサルにお時間を割いていただきました。時間と集中力の配分や的確な指摘はもちろんのこと、平常心を乱すことなく弾き続ける姿はまたとない手本でしたし、その音楽に触れれば触れるほど圧倒されました。

大きな喜びの中で、次第に自分が萎縮していくことに気づきながら。

前日のリハーサルを終え、青柳先生と中国料理を食べながら、音楽以外の話などでくつろげたことは、とても楽しい思い出です。

翌日に備え早めに解散し、ホテルの小さな部屋で自分の小ささを思い知りながら、今一度、この公演の意味を考えました。

やはり、私は一奏者に落ち着くことはできないのです。演奏だけに集中するのが、いつだって私の悲願です。でも、できた試しがありません。

特にプロデューサーであり、お客様にとってのホスト役を担っている公演では、本来そうであってはいけないのですが、演奏の質を守る以上に手を抜けない部分というのが、確かに実在するのです。

私は演奏を退き、企画に専念すべきではないか。最近は、人様の前で弾けば弾くほど、そう思うようになっています。人を輝かせる方法は知っていますが、自分のことはわかりません。

それでも、この度、弾かせていただいたのは、冥利に尽きます。勢いで弾く薄っぺらい音楽とは異次元の演奏を、私は至近距離で浴びながら格闘できた。付いていくだけで必死でしたし、心身ともに傷だらけですが、これがどれほど幸せで恵まれているかを理解する分別はあります。

そして私はこの経験を必ず生かします。エレクトーンで誰ひとり到達しなかった領域が、すでに射程距離にある。このチャンスを命懸けで狙っていきたい。青柳先生は無口ですが、そんな希望を与えてくださいました。

ヤマハ特約店としては異質な公演を実施した文化堂の心意気にも、心からの敬意を表します。

そして応援してくださったお客様、ありがとうございました。

写真:上田海斗

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